March 2021

次世代ホームケアコンセプトの開発と実現パイロット

作者: Rolf Dalsgaard Johansen (Haderslev市、ディレクター) 投稿限: LinkedIn記事 (デンマーク語)

デンマークでは1949年から主婦が代行してきた介護システムに代わり、1958年に在宅介護制度が導入されました。当時も今も、政府は施策として国民ができるだけ長く自宅で過ごせるようにすることを目指してきました。Haderslev市は、この政治的に大きなテーマを次のレベルに引き上げることを自治体としての責務としています。60年以上にわたって安定した在宅介護や介護施設を提供してきましたが、そろそろ手法を見直す時期にきています。しかしその際には、自分の人生の主役になりたいという高齢者の願いに配慮し、高齢者に提供するサービスの幅を広げるようにすべきですし、そしてもちろん、私たち自治体は、掲げている大きな政治的テーマと、待機リストに載っている最後の一人まですべての人と連帯し、それぞれが望むものために財源を確保するという責任との間でバランスをとるようにしています。

ここである物語をお聞かせしましょう。これは作り話で、純粋なフィクションですが、87歳のヒルダの物語は、Haderslev市でまもなく現実になることかもしれません。

ヒルダの願いは自分のアパートで暮らしていくこと

ヒルダはその長く豊かな人生をずっとHaderslevですごしてきました。現在、彼女は小さな庭付きのアパートの一階に一人で住んでいます。彼女には成長した娘がいて、彼女の面倒を見てくれていますし、親切な隣人もいます。彼女は骨粗鬆症を患っており、痛みを抱えています。彼女は歩行器を使っており、一日に三回在宅介護の助けを借りています。

ヒルダは、何かを変えなければならないと感じていました。彼女の娘は、ヒルダが安心するように、しばしば泊りがけで来世話をしに来てくれていますが、いつまでもそんな状態を続けられるわけはありません。また、親切な隣人たちが庭の手入れし続けてくれることも期待できません。ここ数ヶ月の間しばしば、ヒルダはそろそろ老人ホームに申し込むべきかどうか考えていました。その方がみんなのためになるのかもしれませんが、彼女は本当にそうしたくないのです。自分がよく知っている環境で暮らし続ける、それが彼女の願いでした。

ヒルダの状況は決して特別なものではありません。デンマークには世界でも有数の老人ホームがあり、そこでは有能で思いやりのあるスタッフが、介護を受ける高齢者が温かくて素敵な日常生活を送ることができるように働いていますが、それでも私たちの多くは、できるだけ長く自分の家に住み続けたいと思っているはずです。

ヒルダの物語を続けましょう。ある日、ヒルダのもとに娘と介護士が同時に訪ねてきたとき、ヒルダは老人ホームに申し込むことをめぐって、自分が考えていることを二人に話します。話終わると、ヒルダは深いため息をつき、椅子にもたれかかって、見るからに取り乱しているようです。しかしそこで、介護士がヒルダに新しいサービスの話をします。ヒルダのような市民が長く自宅に住み続けられるようにサポートしてくれる諸々の行政サービスのようです。

ヒルダは、テクノロジーの導入と目的があって監視されることに同意しなければなりません

2週間後、ヒルダは娘と一緒に市役所の査定官のオフィスにやってきて、座ってしばし話し込んでいます。ヒルダが日常生活の中でより多くの介助やサポートを必要としていることは間違いありませんが、もし彼女が家に居続けたいのであれば、慎重に考えなければならないことがあります。

1) ヒルダは、個人的、物理的な支援に加えて、新しい技術を使ってもいいと思わなければなりません。それは、スクリーン、時計、通話装置、測定装置といったもの、もしくはそれとは全く違うものかもしれません。

2) ヒルダは、自治体の介護チームが彼女の日常生活の中断していないかを追跡し、事故を防ぐために、例えば、彼女がベッドにいるかどうかを記録するセンサーマットなどといったような、様々な種類のセンサー技術が彼女のアパートに設置されることを受け入れなければなりません。

3) ヒルダのアパートは、スタッフが安全に労働できる環境を確保するための改築等に対応できるものでなければなりません。

これらの3つの条件にヒルダが同意し、その他に自治体が目指す安全で協調的な支援を提供することが可能であると評価した時点で、ヒルダは在宅介護サービスの基準を満たすことになります。

確認が取れた時点で、2つのプロセスが始まります。一つは、ヒルダ、彼女の娘、近隣の方々と協力して、ヒルダの日常生活の詳細、希望やニーズを徹底的に話し合うプロセスです。もうひとつのプロセスは、ヒルダとその関係者のケアとサポートを実際に担当する介護チームを構成する、自治体の介護スタッフの間で行われます。

デジタルコミュニティが補う、新しい安全な日常

数ヶ月後、ヒルダの毎日は大きく変わりました。彼女は、朝の個人的な接触から、気が向いたときにする社会活動や食事、そして夜の日課まで、明確な構造に沿って日々を過ごしています。ある行動はデジタルで行われ、ある行動は物理的に他の人と一緒に行いますが、彼女はそういった行動も自身が会う人も安全だと感じています。

介護をしている娘もよく訪ねてきますが、オンラインの画面ごしでも毎日会話をしています。自宅を介護施設にしてから、ヒルダには2人の新しい隣人ができました。一人はHaderslevの郊外にあるグラムという小さな街に、もう一人はヴォイエンスという街に住んでいて、ヒルダ自身も同じHaderslevに住んでいますが、週に3回はオンラインで一緒に食事をしているといいます。彼女たちが出会ったのは、自治体が手配したバス旅行でした。ヒルダはロボットの芝刈り機に芝刈りを手伝ってもらい、隣人は今でも時々バラを刈ってくれています。

時間が経つにつれ、ヒルダにとって難しくなったことも、少し面倒になってきたこともあるものの、彼女はあまり気にしていないようです。彼女は今でも小さなアパートに住んでいて、それが何よりも嬉しいのです。

ヒルダは安心していますし、彼女の面倒を見ている自治体のチームが365日24時間体制で彼女をフォローしていて、何かあればすぐに駆けつけてくれることを知っています。また、彼女の娘もチームとよく話をしているので安心感がありますし、自身の生活が厳しくて関われないときに、自分のその一員として定期的に利用する関係者のネットワークから多くの恩恵を受けています。

この物語はここで終わりにしましょう。

単に調整するのではなく、全く新しいコンセプトを

ここで強調しておきたいのは、「自宅を介護施設にする」という概念が、単なる在宅介護の延長線上にあるものではないということです。市民の家を小さな介護施設として再現し、そこに新しい技術を導入し、様々な調整を加え、全く新しいワークフローとルーティンを確立するのです。何でもありのアプローチではなく、市民のニーズや希望を中心とした緊密な協力関係が築かれます。重要なのは、当事者の家族や友人、隣人が最初からそこに関わっていることです。昨今の老人ホームは最適化されているがゆえに、家族の存在が希薄になっています。これを変える時が来たのかもしれません。介護施設を必要条件としてではなく、多くの関係者が参加したいと思い選択するオプションとして選ぶような時代が。

この新しいサービスは、現在の老人ホームに完全に取って代わるものではなく、一部の市民にとっては追加オプションとなるでしょう。老人ホームは弱った高齢者のための認知症センターになりつつあり、自宅で長く暮らせる人、暮らしたい人を支援する新しい方法を考えようとするのは当然のことです。もちろん、自治体のスタッフが物理的に立ち会う必要はなく、安心感、臨場感、関係性を生み出すような方法で行われます。このような新しい取り組みには、単に在宅介護と老人ホームとを調整するというだけでなく、また別の考え方が必要です。

2021年春のパイロットプロジェクト

私たちHaderslev市役所は、コンサルタント会社のPublic Intelligence社と協力して、今回の新しいコンセプトの開発に取り組んできました。すでに第一期となる5人の市民の方がパイロットプロジェクトに登録してくださり、2021年春に自宅を介護施設にするサービスに切り替える準備ができています。

私たちは、協働をはじめて一年でこのプロジェクトの経験を共有できることを嬉しく思っていますし、もちろんデンマークの他の地域でも同様のプロジェクトがあることも聞き及んでいます。私たちが知る限り、このようなサービスはデンマークにも世界にもまだありません。

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